不動産をしていることは、実は周囲にはあまり話していません。
理由は単純で、
わざわざ言う必要がないと思っているからです。
看護師として働く自分と、
不動産をしている自分は、
どちらかが特別というわけではありません。
ただ、生き方の選択肢が増えただけ。
私はそう思っています。
不動産を始めてから、いくつかのトラブルを経験しました。
深夜に起こる騒音トラブル。
突然の水道管破裂。
入居者同士の感情的な衝突。
最初に騒音の連絡が来たときは、正直、焦りました。
でも、不思議とパニックにはなりませんでした。
「焦っても状況は変わらない」
そう分かっていたからです。
私はまず、事実を整理しました。
何が起きているのか。
誰が、どんな状況なのか。
今すぐ対応が必要なことは何か。
感情と事実を切り分けて考える。
これは、不動産を始めてから身についた力ではありません。
看護師として、何度も繰り返してきた思考でした。
購入した物件では、水道管が破裂している箇所もありました。
壁の修理が必要だと分かったときも、
意外なほど冷静でいられました。
修繕費用の目安を、事前に把握していたからです。
「いくらかかるか分からない」状態が怖いのであって、
「いくらかかるか分かっている」なら、
それはただの数字になります。
看護師の仕事も、どこか似ています。
状況が分からないときは不安でも、
アセスメントできれば、恐怖は小さくなる。
不動産も、まったく同じでした。
不動産会社から、こんな言葉をかけられたことがあります。
「こんな物件、もう出ませんよ」
「今決めないと、他の人に取られます」
昔の私なら、きっと焦っていたと思います。
でも今は、こう伝えています。
「必要な情報が揃わない限り、買いません」
急かされること自体が、
リスクのサインだと分かるようになったからです。
感情ではなく、情報で判断する。
これも、看護師として身についた感覚でした。
実は、不動産を始めるきっかけは、意外なものでした。
「不動産、やってみたら?」
そう言ったのは、妻でした。
その一言で、世界が少し変わりました。
正直なところ、
私は最初から自分にできると思っていたわけではありません。
でも、
「自分でも、やれるかもしれない」
そう思えた瞬間がありました。
融資額は3000万円。
銀行からその金額を提示されたとき、
私はやっとスタートラインに立てた気がしました。
同時に、少し不思議な感覚もありました。
今まで忙しく動き回っていたのに、
急に時間ができて、落ち着かない。
休みの日に不動産の話を聞いたあの日も、
どこかソワソワしていました。
忙しさがなくなることに、
自分の心が追いついていなかったのかもしれません。
はじめて家賃が入った日のことは、今でも忘れられません。
嬉しさと同時に、
大きな安心感がありました。
本当に入ったんだ。
本当に現実になったんだ。
夜勤で得ていたお金とは、まったく違う感覚でした。
自分の時間を削らなくても、
収入が生まれる。
頭では分かっていたはずのことが、
その日、ようやく実感に変わりました。
その日の夕方、私は娘をお風呂に入れていました。
湯気の立つ浴室で、
娘が突然こう言いました。
「パパ、もう夜働かなくていいの?」
一瞬、言葉が詰まりました。
「うん、もう夜は働かなくていいよ」
そう答えた瞬間、
娘の顔がぱっと明るくなりました。
「やったー!」
その一言で、胸の奥が熱くなりました。
ああ、自分は何のために不動産を始めたんだろう。
その答えが、はっきりしました。
不動産を始めてから、もう一つ気づいたことがあります。
それは、
看護師という職業そのものが、思っていた以上に「信用されている」という事実でした。
私はずっと、借金は怖いものだと思っていました。
でも融資の相談をしたとき、
金融機関の担当者から言われた言葉が、今でも忘れられません。
「看護師さんは、安定した職業なので評価が高いんですよ」
正直、驚きました。
自分では、ただ必死に働いているだけだと思っていたからです。
でも金融機関から見れば、
国家資格があり、需要がなくならない職業は、立派な「信用力」でした。
私はそのとき初めて知りました。
借金ができることは、
リスクであると同時に、選択肢でもあるということ。
もし、お金の知識を知らなければ、
私は一生、この「信用力」を使わないまま終わっていたと思います。
看護師として働いているだけで、
実はすでに武器を持っていた。
それに気づけたことは、
不動産を始めてよかったと思える理由の一つです。
もし、不動産を始めていなかったら、
私は今も夜勤を続けていたと思います。
忙しさを「やりがい」だと思い込み、
家族との時間が減っていることにも、
深く向き合わなかったかもしれません。
たぶん私は、
「これが普通」と自分に言い聞かせながら、
働き続けていたと思います。
でも、不動産を始めてから、
人生の見え方が変わりました。
一番怖い未来は、
失敗することではなく、
選択肢がないことだと気づいたからです。
看護師が不動産をやる強さは、
特別な才能ではありません。
・状況を冷静に整理する力
・感情と事実を切り分ける力
・最悪のケースを想定する力
・数字を現実として捉える力
これらは、看護師が日常的に使っている力です。
私は、不動産を通して初めて気づきました。
「看護師のスキルは、病院の中だけのものじゃない」と。
不動産を始める前、
私は「自分にできるのか」と何度も考えました。
でも今は、はっきり言えます。
看護師だったからこそ、不動産を続けられた。
もし、あのとき一歩踏み出していなかったら、
今の生活はありません。
夜に働かなくてもいい人生。
家族と同じ時間に生きる人生。
それを選べたのは、
看護師として積み重ねてきた経験があったからでした。
夜勤を手放して見つけた、小さな幸せと大きな自由