もし、不動産を知らなかったら。
私はきっと、今も夜勤を続けていたと思う。
看護師としてのキャリアを考えれば、それは自然な選択だった。
認定看護師の資格を取り、次は管理職。
「できる人材」として期待され、責任ある仕事を任される。
周囲から見れば、順調なキャリアだったはずだ。
収入も、今よりは多かったかもしれない。
夜勤を続ければ、毎月10万円ほどの上乗せ。
数字だけを見れば、夜勤を辞める理由なんてなかった。
でも、その代わりに失っていたものは、何だったんだろう。
子どもが寝ている時間に家を出て、
帰ってきたときには、もう寝ている。
朝はすれ違い、夜もすれ違い。
「今日、幼稚園で何があったの?」
そんな何気ない会話すら、どこか遠いものになっていた。
夜勤明けの日は、午後3時ごろまで眠ってしまう。
体は動いているのに、心が追いついていない感覚。
家族から「ちょっと疲れてる?」と聞かれるたびに、
自分でも答えが分からなかった。
疲れているのか、
それとも、この生活に違和感を覚えているだけなのか。
看護師という仕事は好きだった。
患者さんの変化に気づけたとき、
チームで一人の命を支えられたとき、
「この仕事を選んでよかった」と何度も思った。
でも、ふとした瞬間に、こんな疑問が浮かんだ。
――私は、誰のために働いているんだろう?
患者さんのため。
職場のため。
チームのため。
もちろん大切なことだ。
でも、自分の人生や家族の時間は、どこにあるんだろう。
もし不動産を知らなかったら、
私はきっと、もっと忙しくなっていたと思う。
管理職になるために動き、
委員会やプロジェクトを抱え、
「期待に応える自分」でい続けようとしていたはずだ。
周りから見れば、立派な看護師。
でも、家族と過ごす時間は、少しずつ削られていく。
一番怖い未来は、
“忙しいのに、何も変わらない人生”だった。
収入はある。
肩書きもある。
でも、心の余白がない。
「このまま10年経ったら、私はどうなっているんだろう?」
そんな問いに、はっきり答えられなかった。
だからこそ、不動産に出会ったことは、
単なる副業や投資ではなく、
人生の選択肢を増やす出来事だった。
不動産を始めたことで、
お金の流れを初めて“自分の目”で見た。
給料から引かれている税金。
所得税、住民税。
減価償却や経費という概念。
「知らなかった」だけで、
こんなにも選択肢が狭くなっていたんだと、
そのとき初めて気づいた。
もし、不動産を知らなかったら。
私は今も、「忙しいこと=正しいこと」だと思い込んでいたかもしれない。
でも今は違う。
働き方は、自分で選べる。
人生の時間の使い方も、自分で決められる。
そう気づけただけでも、
不動産に出会った意味は、十分すぎるほどあった。
夜勤を手放して見つけた、小さな幸せと大きな自由