不動産を始めた頃、正直に言うと、
「看護師が不動産なんて、本当にできるのかな」と思っていた。
医療の世界と、不動産の世界。
あまりにも違う。
数字、契約、融資、修繕、トラブル。
どれも、看護学校では教わらなかったことばかりだった。
でも、物件を持ち、時間が経つにつれて、
私はあることに気づいた。
――看護師の思考は、不動産にそのまま使える。
それは、資格や知識の話じゃない。
「考え方」の話だ。
深夜の騒音トラブルと、ICUの記憶
購入して2年ほど経った頃、
ある日、管理会社から連絡があった。
「深夜に騒音のクレームが出ています」
原因は、入居者同士の痴話喧嘩だった。
正直、焦った。
どうしたらいいのか、一瞬分からなくなった。
でも、焦っても仕方ない。
私は一度、深呼吸した。
「今、何が起きているのか」
「自分がやるべきことは何か」
「誰に相談すべきか」
冷静に管理会社と話し、
不動産仲間にも相談しながら、対応策を決めた。
そのとき、ふと思った。
――これ、不穏状態の患者さんの対応と似ている。
ICUで、興奮状態の患者さんに対応するとき、
感情的になったら負けだ。
状況を整理し、
安全を確保し、
チームで動く。
不動産のトラブルも、まったく同じだった。
「怖くなかった」水道管破裂の理由
実は、この物件、購入した時点で問題を抱えていた。
水道管が破裂していて、
壁の修理が必要だった。
普通なら、「やばい物件を買ってしまった」と思うかもしれない。
でも、不思議と怖くなかった。
理由はシンプルだった。
修繕費用が、ある程度見えていたから。
看護師の仕事でも同じだ。
リスクが「見えていない」ことが、一番怖い。
でも、リスクが見えていれば、対処できる。
不動産も同じだった。
「問題があること」よりも、
「問題が見えないこと」の方が、よほど怖い。
「こんな物件はもう出ません」と言われたとき
不動産会社から、何度も言われた言葉がある。
「こんな物件は、もう出ませんよ」
昔の私なら、その言葉に流されていたと思う。
でも今は違う。
私は、こう伝えている。
「必要な情報が揃っていない状態で、急かされても買いません」
なぜなら、看護師として学んできたからだ。
医療の現場で、
情報が揃っていないまま判断することが、
どれだけ危険かを。
不動産も同じだ。
焦って買う物件は、
だいたい“良い物件”じゃない。
不動産を始めてから、
私は初めて「NO」と言えるようになった。
それは、不動産の知識が増えたからではなく、
「自分の判断を信じる力」がついたからだった。
看護師が持っている、最大の武器
看護師としての経験が、不動産で一番役立ったのは何か。
それは、
「リスクと対処法をセットで考える力」だった。
起こり得るリスクは何か。
起きたとき、どう動くか。
最悪のケースでも、耐えられるか。
これは、ICUでも、不動産でも、同じだった。
多くの人が、不動産を怖がる。
でも私は思う。
不動産が怖いのではなく、
“考え方を知らないこと”が怖いのだと。
もし、不動産をしていなかったら
もし、不動産をしていなかったら。
今の生活は、間違いなくなかった。
夜勤を続け、
管理職を目指し、
忙しさに追われる毎日。
家族との時間は、
今よりずっと少なかったと思う。
不動産は、私にお金だけをもたらしたわけじゃない。
「選べる人生」をくれた。
看護師であることは、
不動産に不利な条件じゃなかった。
むしろ、最大の強みだった。
私は今、そう確信している。
夜勤を手放して見つけた、小さな幸せと大きな自由